パイパーは他の多くの女性スタントよりも沢山の
格闘シーンを経験したはずです。
Q.過去にアクションの経験がない役者の撮影はどのように対処されますか?困難を要しますか?
A.『ボーン・アイデンティティー』の撮影で学んだことは、アクションがギリギリ可能な役者ならば、スタントを起用した方が良いということです。演技のできるプロのスタントマンを探す方が、スタントのできる役者を探すよりも簡単だからです。さらに格闘シーンでは2人のうちどちらか1人にスタントマンを起用した方が良いです。なぜなら2人とも役者の場合、怪我をする恐れがあるからです。パイパーの場合相手がプロのスタントマンであれば、彼女自身で格闘シーンの撮影が可能です。マット・デイモンも同様で、彼の敵役のキャストはほぼ全員プロのスタントマンです。なぜなら普通の役者を起用し、格闘シーンだけプロのスタントマンを雇うという手間が省けるからです。
これがパイパーのアクションシーンを撮影する上での基本的理念です。彼女はプロの女性スタントになりつつあります。多くの女性スタントよりも既に沢山の格闘シーンを経験したはずです。何ヵ月も自分でスタントしてきましたから。
Q.キャストを選ぶ時点で既に数名、もしくは役者全員の役柄との適合性を見抜いていたのか、それとも役作りがうまくいっただけなのか、どちらですか?
A.たしかにパイパーとクリスは適役だと選ぶ時点で思っていましたが、ジェイ役(センディル・ラママーシー)は、基本的な型が決まっていただけで幅広い方向性への発展が可能でした。そこで私たちは多くの著名な役者を検討しました。そしてセンディルが頭に浮かび、彼を配役する場合役柄のクオリティをどのようにするか、そのクオリティを考慮した場合どんなストーリーラインが適合するか、そしてセンディルをキャスティングした場合どのようなドラマに仕上がるか、などを話し合いました。他の役者もジェイ役に検討し、同様の手法で各役者をキャスティングした場合の役の方向性を話し合ったのです。
撮影現場で役者と対面する以前に方向性は決定できます。特に著名な役者の場合キャスティングする時点でその役者が適役になるよう、方向性を決定することが可能です。ピーターとカリを配役した理由は役に求められる人間的な活力や特定のストーリーラインなどを明確な方向性に沿って演じられる適役だったからです。それでも撮影現場で実際に気づくこともあります。なぜなら撮影のテーマを演じる役力は二人とも未知数だからです。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーも同様に、配役する時点で既に著名な役者でした。が、初めて2人が対面したのは撮影初日でした。2人が同じシーンで競演すると、大物ムービースターとして今まで知っていた彼らの特徴と同じくらい、今まで知らなかった多くのことに気がつきます。私は事前に決めていた方向性を現場で見直し目の前で起こっている物事に対して忠実に製作する能力が自分にあることを誇りに思います。何が自然に起こっているのか?と落ちついて見つめ直し、評価するのです。
センディルをキャストした時は、彼の演技ではストーリーラインがどのようになるかを予想はしていました。しかし実際にセンディルが現場でジェイを演じてみるまでは100%の予測ができません。私自身誇りに思っていることは、私は役者と数日間の撮影を終えた後に役の方向性を見直しはじめ、常時軌道修正を加えていくことができるということです。このプロセスには終わりがありません。
ダグ・リーマン:DOUG LIMAN
1965年7月24日 アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。